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玄関ポーチを上がると、大きな木製の扉を開けて、メイドが待っていた。
しかし、現代にリアルなメイドがいるとは、と驚きを隠せなかった。
「カッコイイ服ですね。
これって、支給されたのですか」
甘利はすぐに反応した。
「始めは支給されたのですが ───」
少し言い淀んでから、
「自分で作った服に変えたんです。
私、手芸が趣味で、洋服づくりもしているものですから」
「とってもお似合いですよ。
普通、メイドはカフェとかにいて、ロリコンなイメージがありますけど、この服は少しもそんな感じしなくて、仕事着っぽいというか」
「うん、女性らしさと機能性を兼ね備えているね」
甘利の言葉を羽山が継いだ。
上がり口がないので、一般の住宅と言うよりもホテルのロビーのようである。
早速、現場を見せてもらうことにした。
亡くなった司郎の部屋には、すでに遺体はなかった。
「ここに倒れていたのです。
遺体を運び出した後、そのままにしてあります」
メイドが指差した。
吐瀉物もあったはずだが、時間が経ったせいで痕跡は見当たらなかった。
入り口の脇に黒い封筒が置いてあった。
一通手に取ると、
「魔術信仰で有名なネクロマンシ―・リプライズから、度々送り付けられました。
悪魔を召喚するとか、禍をもたらすなどと書かれています」
封が開いていたので、手紙を読むと、悪魔を召喚するときの呪文らしい文章と、呪いの言葉が書いてあった。
「旦那様は、この封筒を見ただけで怯えた顔をしていました」
ベッドは乱れていなかった。
2人は床や壁、家具をくまなく調べ始めた。
「私は水無瀬と言います。
もしご用がありましたら、キッチンにおりますので内線でお呼びください」
と言い残して、荷物を部屋に運び入れると一階へ降りて行った。
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