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「……山の絵?」
「そうだよ」
「なんで……」
「ほら。久しぶりにジグソーパズルやってたじゃん。その時、あなたが楽しそうにしてるなーって思ったから」
「別にそんなんじゃないよ。あの時は単純に、タイムアタックしようって決めてテンション上がってただけだけど」
「えっ、そうなの?」
「……うん」
私は微妙な顔で頷いた。
できるだけ早く終わらせる以外のこと、それこそ『楽しむ』といった類いのことは、全く考えていなかった。
もうその燃え上がったテンションはとっくに冷めていて、今はパズルなんて全くもって興味が湧かない。
けれど。せっかくもらった以上、拒絶するのも薄情な気がして。私は結局お礼を言って受け取った。
トコトコと自分の部屋へ引っ込んで、机に向かう。
ぱかりと、蓋を開ける。
その時だった。パッと目に飛び込んできた山の絵に、私はそっと目を見開いた。
「わぁ……」
色彩。
それが、その絵を表す言葉だった。
どんな風に画材を乗せれば、こんな山ができるんだろう。私は目だけで、その絵の輪郭をなぞっていった。
それが絵の具で塗って描かれたものなのか、版画なのか、デジタル絵画なのか。それもわからぬままに、私はただ、見とれていた。
「作って、みようかな」
……ジグソーパズルなんて、やってられるか。
ついさっきまで、そう思う自分がいたことは、確かだった。
この前タイムアタックをした時だって、きっかけは妹が作っているのを見たこと、ただそれだけだった。私だったらもっと早く作れる! と対抗意識を燃やしただけだったのだ。
でも。
お母さんが買ってくれた。
大事な贈り物。
よし、と息を吐く。私はそっと、この小さなピースに手を伸ばした。
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