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けど僕は、久住さんの地方ニュースのファンなのだ、実は。一時は録画するほど好きだったので、筋金入りだと自負している。
たまに久住さんが地方の人々を取材して報道することがある。地方の人に接する時、地方の現状などを報道する時、久住さんの物腰はいつも丁寧で、やわらかだ。面白いことも言ったりするけど、人々への尊敬と愛にあふれている。そんな気がする。そんな気にさせる声を持っている。
そんな声に、あこがれたのだ。少し変かもしれないけれど。僕は久住さんの声になりたい。
放送部に入ろうと思ったのは、そんなことがきっかけだった。
北村さんは、どうだったんだろう。
北村さんは。
何で、放送部に入部したんだろう。
と、思うくらい。
北村さんは、声が恐ろしく小さかった。
「……では次の曲です。……ムで、「……ッツ」……す……」
「あ、北村さん、もうちょっと大きな声のほうがいいかも」
曲をかけた後、先輩が北村さんの表情をうかがった。
「ご、ごめんなさい」
「ううん。緊張するよね? 校内放送だもん」
「は、はい」
「大丈夫すぐ慣れるから」
次の曲紹介は、僕がさせてもらった。
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