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でも。北村さんの消え入りそうな、それでいてぴかぴか光る声を、守ってあげなくちゃなって。何となく部員のみんなが、そう思っていた。多分。
とはいえ。
「何で、放送部に入ろうと思ったの?」
と、つい聞いてしまったことがある。
その日も、北村さんはうまく声が出せなくて、校内放送はボリュームの切り替えを間違えたみたいになってしまった。
ただその日は、一年生だけで初めて校内放送をやってみよう、という日だった。昼休憩の間、音楽を流す係。誰も助けてくれない。機械の操作の仕方も分かっていたし、言うべきことも決まっていたし、台本もあった。けれど、うまくやれるか内心心配だった。
だから「いつも通り」不調な北村さんに、僕は少しイラついてしまったのだった。
「何で、放送部に入りたかったの?」
純粋に不思議だったのもある。こんなにしゃべれないのに、何でマイクの前に立とうとするのか。
「……になりたかったから」
と、北村さんは言った。
聞こえないよ。僕は少し乱暴に聞き返した。
「え? 何て?」
「アナウンサーになりたかったから」
と、北村さんはもう一度言った。
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