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「す、好きなドキュメンタリーがあって。それを見て」
「へぇ。どんな?」
けしの実ほどの小さい声。僕は自然と北村さんに身を寄せて、耳をすました。
「くずみアナの」
どきん。
「久住アナのナレーションが、すごく好きで」
え。
うそ。
そんな人、いるの?
現実に?
この学校に?
目の前に?
北村さんが?
「え……ぼ、僕も」
思わず自然に言葉があふれた。
恥ずかしいけど。変な趣味だと思われそうだけど。
「僕も、好きだ」
言った。言ってしまった。
ついに僕は、「久住さん推し」を誰か、僕以外の人間に告白してしまったのだった。
そして、まるで僕に告白されたかのように、北村さんの頬が赤くなった。
「え、え、そうなの? どうゆうこと」
「そのドキュメンタリーってどれだろ。空き家のやつ? それともごみ収集車の?」
「あっ、ごみ。ごみ収集車の」
「見た見た。僕もそれ見たよ。すごくよかったよね。カメラワークもBGMもよかったんだけど、やっぱり」
「久住さんの語りが」
「……ね」
ふふっ。
楽しくて笑っちゃった。
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