恋は今日もレベルを上げる

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 ***  どうやら彼女は今、とあるアニメにハマっているらしい。世界的大人気のカードゲームと、それを題材にしたアニメなのでファンも多く、ネットでそういう人達とオタク会話を繰り広げるのが楽しいようだ。  うちは両親がどちらも共働きである。父は定年ではないし、父よりだいぶ年上の母もパートで夕方まで戻ってこない。帰宅部の妹と私は、それまで家で二人で過ごすことも多いのだ。社交的な母は友達と晩御飯を食べてくることもあるので、そうなると晩御飯も二人だけで食べることもままあるのである。  姉妹の会話が多いのはいいことだろう。  そして、自慢じゃないが私達の仲はいい。どっちもオタク、それも腐女子だから尚更話が合うのである。まあ、お互い基本的リバ厳禁なので、推しCPの解釈が逆だったりすると多少バチバチすることはあるのだけれど。 「ああ、ほんと今楽しいわー」  今日も今日とて、揚羽はニコニコしながら私が作ったカレーを口に運んでいる。 「姉貴も知ってるでしょ?あたしが前にハマってたジャンルがドマイナーだったの」 「ああ、うん。……そりゃ、週刊誌で十話で打ち切られた漫画じゃね……」 「あれはほんと納得いかなかった!あんな神漫画がなんで人気出ないとか世間の目は腐ってるとしか思えない!あの漫画のタイトルでpixivで検索したらあたしが書いたSSしか引っかかってこなかったんだよもう終わってるよお!主人公総受けもっと見たかったのにそれ以前だなんて悲しすぎる……」 「はいはい」  私はアレだったらライバル総受け派なんですけどね、とは心の中だけで。それを行ったら即戦争なのは目に見えている。過激派オトメは怖いのだ、私含む。 「でも今の決闘王デラックスのシリーズは、男性ファンも女性ファンもたくさん多いし、二次人口もカードゲーム人口も多くってすっごく楽しいんだよー」  揚羽は最近、ご機嫌なことが多い。今の推しジャンルと、そのファンとの交流がもう楽しくて仕方ないらしい。  私もドマイナージャンルを推していて涙がちょちょ切れたことはあるからわかる。自家発電するしかない時の悲しみといったらない。いや自家発電しても、自分が書いた二次では萌えない時もあるから本当につらい。  それに、二次創作はまだ自家発電できても、ファン同士での交流は一人では無理なのだ。  このキャラがかっこいいよねとか、アニメのここが最高だったねとか。そういうのを言って盛り上がれる友達というのは本当に貴重なのである。彼女が喜んでいるのを見るのは、私も気分がいい。 「あんたが楽しそうなら、私も嬉しいわ」  ゆえに。  水を差したくはないと思いつつも、一応忠告しておくのだ。
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