恋は今日もレベルを上げる

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 エロを中学生が見るリスクを説明するより、こっちで畳みかけた方が彼女には効果があると知っていた。案の定、神絵師の絵が自分のせいで見られなくなるかもしれない、というのは効いたらしい。  正直なところ、こっそり彼女がそういうものを見るのを止めるのは難しいことではあるのだ。それでもせめて、“悪い事だから誰にもバレないようにする”だけでも徹底してほしいところである。私も過去、推していた絵師さんが“高校生だけどあなたのエロ絵見てまーす!”とファンに言われたせいで、サイトにあった作品全部を引き上げて撤退してしまったなんてことがあった。あんな悲劇は二度とごめんなのである。 「……べ、別に、同人即売会に行こうとか、そういうのじゃないんだって。お金使う予定もないし」  しどろもどろで、彼女は言った。 「でもその、会いたい人がいるというか。その人が、ちっちゃなオフ会開くって言ってるっていうから、参加したいなーと思ってたというか」 「駄目です」 「なんでよ!」 「母さん父さんも絶対駄目って言うよ?オフ会にかこつけて変なことしてくる人とかいたらどうすんの。あんたはまだ中学生なの、こういうこと言いたくないけど、そこは自覚して貰わないと困る」 「で、でも!」  今日は妙に食い下がるな。そう思っていると。 「でも、どうしても会いたいんだもん!ケイゴさんに!」  揚羽の必死過ぎる様子。私は察してしまった。ケイゴ、というのが会いたいオタク絵師か何かということなのだろう。しかし、これはただのファンではなくて。 「まさかあんた、そのケイゴさんとかいう人のことが好きになっちゃったとか言うんじゃないよね?」 「……悪い?」  私の言葉は図星だったらしい。彼女は俯いてぽつりと言った。 「すごくかっこいい絵描く人なんだって。二次創作の漫画も面白いし。それに、めちゃくちゃ紳士的で、あたしが中学生だって知ってても全然馬鹿にしたりしないんだよ?定期テストの愚痴とか、クラスの愚痴とか、先生の愚痴とかも優しく聞いてくれるし。だからその、少しでも長くお話してたいし、もっともっと知りたい、と、いう、か……」  なんとなく察してしまった。彼女がここ最近、あんなにテンションあげあげで家に帰ってきていた訳。  手を洗うのもそこそこにパソコンの電源を入れにいった訳。  Xでの交流にドはまりしていたのは、ただのファンというだけじゃない。ネットの上で出会ったその人に、本気で恋をしてしまったからだということに。 「顔も本名も、知らないんでしょ?」 「知らないけど、でも」
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