2人が本棚に入れています
本棚に追加
第4章 “一から十まで”
演奏する為にギターを手に取ったのは、何ヶ月ぶりだろう。
最後に弦に触れてから、かれこれ4ヶ月は経ってるか。
そう考えると、時が経つのはとても早い。
こんな調子で、私は一生病院から一歩も踏み出せないのだろうか。
気づいてたら死んでしまうかもしれない。
何度もお医者さんややはらさんに病名を聞いているけれども、薬剤生脱毛症だということしか教えてもらえない。
私はもう幼稚な子供ではないし、中学生なのだから、いい加減教えてくれてもいいのに。
それに、今更病名を知ったところでショックも何も受けない。
人は悲しむことに慣れると、こんなにも自分に薄情になれるのだと、入院してから知った。
だが、いつまでもそのように自虐的になっていてもしょうがない。
勇気を奮って、ギターに弦を指先で触れてみる。
ーボロロン。
久しぶりに聞いた弦の音。
妙な懐かしさに駆られる。
少しだけ、気持ちが高揚する。
思わず笑みが溢れる。
そういえばまだ元気だった頃、休日は自室にこもって、時間が経つのも忘れてギターの練習をしていたっけ。
そんなことを考えていると。
ーガラガラガラガラ。
病室のドアが悲鳴をあげて開く。
そこには、満面の笑みのやはらさん、、、と、見知らぬ中学生らしき3人が入ってきた。
病室に、何とも言えない沈黙が通る。
その沈黙を破ったのは、やはらさんだった。
「えっと、4人とも初対面、だよね?」
私たちは一斉に首を縦に振る。
「そっか、じゃあ、みんなに自己紹介をお願いしようかな?」
やはらさんは笑顔で私たちに病室の椅子に座るよう促した。
ートスっ。
みんなが椅子に腰掛ける。
やはらさんは「ちょっとお茶淹れてくるから待っててね」というと、病室を出ていった。
最初のコメントを投稿しよう!