プロローグ

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プロローグ

 もう、迷いは無い。いいんだ。私はそっと、頭に手を当てる。  周りからの歓声はすごいのに、自分の心臓の音が聞こえてくる。 どっくん。どっくん。 その音はまるで、今の私の気持ち、そのものだった。 取る。ーウィッグを。  私の“仮面”を取った。あとはどうなろうと、知ったことじゃない。 周りが息を呑んでいることが伝わってくる。思わず鳥肌が立つ。 周りにとっての“普通”は、私にとっての“憧れ”そのものだった。 普通。変な響きだ。でも私はもう、この響に振り回されない。 ーだって、私の“普通”は、みんなの“憧れ”だって気づいたから。 もう、怖いものなしだ。
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