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俺は診察室で医師に懇願した。
「先生、俺の病気を治してください。子供の頃からの知り合いの天才外科医の先生にしかできないことです。お願いします!」
医師は眼鏡の縁を触りながらゆっくりと応えた。医師の顔は自信と誇りに満ちていた。
「昔からの友達のあなたが苦しんでいるなら喜んで助けましょう。私に治せない病気はありません。必ず治してみませます!」
医師はそう言った後で、悪魔のような笑みを浮かべた。眼の奥が鋭く光っていた。
「ただし保険は効きません。莫大なお金が必要ですが、それでも宜しいですか?」
俺は携えてきたスーツケースから大量の札束を取り出した。俺はテーブルの上に夥しいほどの札束を広げた。
「金はいくらでも払います。だから治してください!」
医師が札束を見て天使のように嬉しそうな顔で頷いた。医師は何よりも金を愛していた。金のためなら相手が極悪人だろうと、どんなに難解な手術でも行ってきた。
「わかりました。この私に任せてください。それで治して欲しいのはどこですか?」
俺は自分の頭を指差した。
「俺の人生を苦しめてきた頭を治してくれ。頼む!」
するとさっきまで余裕の表情だった医師が慌て始めた。しきりに首を捻っていた。
「いや、それはちょっと難しいですね」
俺は医師に詰め寄る。
「先生! 金はいくらでも払うから治してくれ」
医師は俺の頭を暫く眺めてから、心の底から深い溜め息を吐いた。
「無理です。残念ですが、あなたの馬鹿な頭は治せません」
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