2 雨降り山・竜の泉

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2 雨降り山・竜の泉

次の日は快晴だった。けれどヴェセルを出て数刻、水竜バーニの()(あめ)()り山の山頂には雲がかかっていた。 午後は降るかもな、とヤンが言うので、私たちは急いで薬草や素材を集めながら山に登った。 頂上の(ほこら)についたのは正午すぎで、ヤンは、ううんと首をひねる。 「……これってやっぱり、ニナの力なのか?」 「なにが」 「いつも道中かならず出くわす魔獣に、まったく()わなかった。それに毒虫や、不慮(ふりよ)の事故にも」  重たそうな背嚢(リユツクザツク)を軽く背負ったヤンは、全身黒づくめな上に革鎧も着こんでいて、今日は道具屋というより百戦錬磨(ひやくせんれんま)野伏(のぶせ)に見える。 「ニナってさ、魔術師だよな?」 「うん。建前上は」 「なんだよそれ。俺は『弓の名手で、そうとう戦闘力が高い』って(うわさ)、聞いてたんだけど」
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