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「なにか手伝おうか?」
「無理するなって。さっきからずっと、だるそうじゃないか。火にあたって休んでろよ」
「……ごめん」
私は小屋の壁に寄りかかって、備蓄品の敷き藁に座ったまま、ただヤンが働く様子を眺めていた。
「できた、ほら食え、暖まるぞ」
深皿に盛られたシチューは料理店で食べるような味で、思わず感嘆する。
「すごぉい、美味しいっ。うちの三人はみんな、料理下手だったんだよね」
「あー。レオンハルトとギュンターは、食えりゃなんでも良さそうだしな。でもミカエルは? あいつは美食家だろ」
「そうだよ。だから街にいる時はお高い料理店に入りたがるし、宿も上級嗜好だし、高級食材ばっかり調達してくるし。それで、いつも私に怒られて……」
今にして思うと、足りないぶんのお金はミカが自腹を切ってくれていたんだろう。
家紋を見せたり、宿屋と交渉して私だけ個室だったことも多かった。温泉にも頻繁に寄ってくれて。
あれは私が女の子だから、気を遣ってくれていたのかも。
「あーあ、情けないなぁ。私ホントになにも、わかってなかったみたい」
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