3 雨降り山・山小屋

2/6
前へ
/22ページ
次へ
「なにか手伝おうか?」 「無理するなって。さっきからずっと、だるそうじゃないか。火にあたって休んでろよ」 「……ごめん」  私は小屋の壁に寄りかかって、備蓄品の敷き(わら)に座ったまま、ただヤンが働く様子を眺めていた。 「できた、ほら食え、暖まるぞ」  深皿に()られたシチューは料理店で食べるような味で、思わず感嘆する。 「すごぉい、美味(おい)しいっ。うちの三人はみんな、料理下手だったんだよね」 「あー。レオンハルトとギュンターは、食えりゃなんでも良さそうだしな。でもミカエルは? あいつは美食家だろ」 「そうだよ。だから街にいる時はお高い料理店に入りたがるし、宿も上級嗜好(しこう)だし、高級食材ばっかり調達してくるし。それで、いつも私に怒られて……」 今にして思うと、()りないぶんのお金はミカが自腹を切ってくれていたんだろう。 家紋を見せたり、宿屋と交渉して私だけ個室だったことも多かった。温泉にも頻繁(ひんぱん)に寄ってくれて。 あれは私が女の子だから、気を(つか)ってくれていたのかも。 「あーあ、情けないなぁ。私ホントになにも、わかってなかったみたい」
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加