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「なんだよいきなり。……顔色、悪いな」
ヤンは空になった皿を引き取ると、熱でもあるんじゃないか、とひんやりした手で額を探ってくる。
「あ、大丈夫。これはタダの発作だから」
「発作?」
「じつはね……」
魔王と戦った時以来、一人で暗がりにいると眩暈がしたり、身体の震えが止まらなくなったのだと――そう説明したら、ヤンは眉をぎゅっと寄せて、怖い顔になった。
「それ、他のやつらにちゃんと言ったか?」
「言ってないよ。心配かけたくないもん」
「じゃあなんで、俺には言うんだよ」
「え? だってヤンは昔から、なんでも聞いてくれたでしょ。とにかく気にしないで、休んでいればすぐに治るから」
「……そういう問題じゃない」
にべなくそう言ってヤンが木のカップに注いだのは、さっき汲んだばかりの聖水だった。
「飲めよ。身体が楽になる」
「え、でもこれ、売り物にするんだよね」
「いいんだ。どうせあんたがいなきゃ、取ってこれなかったし」
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