3 雨降り山・山小屋

3/6
前へ
/22ページ
次へ
「なんだよいきなり。……顔色、悪いな」  ヤンは(から)になった皿を引き取ると、熱でもあるんじゃないか、とひんやりした手で(ひたい)を探ってくる。 「あ、大丈夫。これはタダの発作だから」 「発作?」 「じつはね……」  魔王と戦った時以来、一人で暗がりにいると眩暈(めまい)がしたり、身体の震えが止まらなくなったのだと――そう説明したら、ヤンは眉をぎゅっと寄せて、怖い顔になった。 「それ、他のやつらにちゃんと言ったか?」 「言ってないよ。心配かけたくないもん」 「じゃあなんで、俺には言うんだよ」 「え? だってヤンは昔から、なんでも聞いてくれたでしょ。とにかく気にしないで、休んでいればすぐに治るから」 「……そういう問題じゃない」  にべなくそう言ってヤンが木のカップに注いだのは、さっき()んだばかりの聖水だった。 「飲めよ。身体が楽になる」 「え、でもこれ、売り物にするんだよね」 「いいんだ。どうせあんたがいなきゃ、取ってこれなかったし」
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加