3 雨降り山・山小屋

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 手渡されたカップに口を近づけたけれど、なぜか身体が動かない。 それを見たヤンは、やっぱりなと(つぶや)く。 それからカップを引き取り、一口(ふく)むや私に顔を近寄せ、ふいに唇で唇をふさいできた。 (っ、ヤン、なにを……!)  目を見開いて抵抗したけど、抱きしめられていて身動きがとれない。 視線が(から)まる。 ヤンの瞳の奥に強い光が(きら)めくのを見て、こくり、水を飲み干した。 「な、なんなの……?」  と、身体から黒い(もや)(ただよ)い出てきた。 「魔王の、死に至る呪いだよ。でも大丈夫。今、浄化されたから。ただし」  ヤンは至近距離でひたと瞳を合わせたまま、まだ私を解放しない。 「聖水を飲んだら、しばらくは嘘がつけない。だから正直に答えて、ニナ。あんたが今、本当に好きな(やつ)は誰なんだ?」 「えっ。ええ?」 「言って。ちゃんと口に出して」 「わ、私が、好きなのは……ええと、今はもうレオじゃない。だってレオには王女(リズィ)と幸せになってほしいもん。だけどミカかって聞かれたら、それもなんか、ちがう気がする」 「……ちがうのか」
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