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手渡されたカップに口を近づけたけれど、なぜか身体が動かない。
それを見たヤンは、やっぱりなと呟く。
それからカップを引き取り、一口含むや私に顔を近寄せ、ふいに唇で唇をふさいできた。
(っ、ヤン、なにを……!)
目を見開いて抵抗したけど、抱きしめられていて身動きがとれない。
視線が絡まる。
ヤンの瞳の奥に強い光が煌めくのを見て、こくり、水を飲み干した。
「な、なんなの……?」
と、身体から黒い靄が漂い出てきた。
「魔王の、死に至る呪いだよ。でも大丈夫。今、浄化されたから。ただし」
ヤンは至近距離でひたと瞳を合わせたまま、まだ私を解放しない。
「聖水を飲んだら、しばらくは嘘がつけない。だから正直に答えて、ニナ。あんたが今、本当に好きな男は誰なんだ?」
「えっ。ええ?」
「言って。ちゃんと口に出して」
「わ、私が、好きなのは……ええと、今はもうレオじゃない。だってレオには王女と幸せになってほしいもん。だけどミカかって聞かれたら、それもなんか、ちがう気がする」
「……ちがうのか」
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