3 雨降り山・山小屋

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「うん。あ、これから好きになろうと思えば、なれるかもしれないけど」 「なろうと思えばって」  そう言ったヤンの声はかすれていた。 「なあニナ。『やれる』のと『したい』のじゃ、雲泥(うんでい)の差があるんだぞ」  ひどく切迫した表情。いつまでも力をこめたまま、離す気配のない両腕。 その目元が朱に染まっているのに気づき、私の胸はどきりと鳴った。まさか。 「……ちなみに俺は今、もう一回、あんたとキスしたいんだけど」  熱を帯びて鋭くなる視線に、心臓をぎゅっと(わし)づかみにされる。 「白状するとさ。俺、ニナがずっと好きだったんだ、初めて店に来た時から。ただ、あんたのパーティは恋愛事情がややこしかったろ。それで一歩引いて満足してたんだよ、話を聞くだけで」  とつとつと低い声で(ささや)かれる。 「だが一緒にこの山に登って、気が変わった。あんたに貴族は似合わないし、田舎でその力を埋もれさせるのも惜しい。――だからニナ、俺と店をやらないか」 「道具屋さんを?」
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