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「そうだ。こうやって材料調達して、冒険者に助言したり、新道具を開発したり。俺は長いこと一人だったから、なんでもできる。苦労はさせない、かならず幸せにする……」
ヤンの言葉が、じわじわと胸に染みてくる。
「なあニナ」
私の顔をのぞきこんだヤンは、敏感になにかを察したようだ。
「キス……してもいい?」
「えっ、えええ」
切なげに指で頬をなぞられ、恥ずかしさで顔に血が集まるのを感じた。
「嫌だったらしないから、そう言って」
胸がざわつく。嫌じゃない。
だって、たしかにミカの家で背伸びしながら生きるより、ヤンの隣にいたほうが自分らしくいられる。
「……いいよ」
「いいのか」
「ん。ヤンならいい」
やっと気づけた。
「私、あなたが好きみたい」
「っ、本当に」
「今、嘘つけないんでしょ……?」
やがて弾力のある感触が口をふさぎ、甘い音を立てる。まぶたを閉じた。私の心は不思議なほど暖かで、ただ求められるままに唇を重ねた――。
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