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4 ヴェセルの道具屋
人生って平坦じゃない。一つ大きな山を越えても、またすぐに別の山がくる。
そうやって私は初恋を失ったけど、代わりに最良の伴侶を得た。
半年後。その日ヴェセルの道具屋を訪れた客は、珍しい三人組だったそうだ。
留守をまかせた隣の女将さんによると、お忍び風なのに、妙に覇気のある青年たちだったって。
あいにく私は夫と雨降り山にいて不在だったのだけれど。
彼らは口々に、こう言っていたらしい。
――ニナといると和むんだよなー、よく笑うし、素直だし、大切な半身みたいで。だから俺は一緒に旅に出たんだ。
――知ってるよ、そんなこと。くそっ、もっと、ちゃんと捕まえておくべきだった。まさか伏兵がいたとは、一生の不覚だ。
――はあ? 俺は前からヤンの気持ちに気づいてたぜ! そんで、けしかける手紙書いてニナをこの店へ送ったんだ、あっはっは。
最後にそう脳天気に笑った赤髪は、おまえかよっ、と他の二人からどつかれていたみたい。
気を遣わせてごめんね、ギュンニ。
でも今の私があるのは、あなたのおかげだよ。本当にありがとうね。
了
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