31 千影視点 僕の女神へ

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 オーナー夫妻の間に立っている彼女は、夫妻と一緒に笑っている。とても親しげな雰囲気だ。他の写真にも同じように映っている。   「それ、私の娘なんですよ」  熱心に写真を見つめていた千影に声を掛けてきたのは、オーナーだった。 「娘さん、ですか」  顔を上げた千影に、オーナーが笑ってうなずく。 「ええ。ここからだと高校は通うのが大変なので寮に入っているんです。今年の夏は受験勉強があるのでお盆にしか帰らないんですが、去年と一昨年は夏中ここでバイトをしていたんですよ」  彼女はオーナー夫妻の娘だった。  だからあんなふうに、客に対して臆することなく接していたのかと納得する。会えなかった理由もわかり、嬉しくなった千影はオーナーに尋ねる。 「受験というのは大学受験ですか?」 「そうなんです。東京の大学に行きたいらしくて。私たち夫婦は東京出身なんで心配はしてないんですけど、今よりも遠くなると会うのも大変になってしまうのが、ちょっと……」 「寂しいですよね」 「ええまあ、寂しいですね」  苦笑しながらオーナーが答える。  そんなオーナーの話を聞きながら、千影は決めた。  自分を救ってくれた彼女と会うのなら、今以上にもっと頑張って、今よりももっと胸を張って自信を持てる自分になってからにしようと――。 「――だから僕は、夕美が帰ってくるだろう夏休みと冬休みは避けて、ロッジに宿泊してたんだ。君に会えないのは寂しかったけど、ご両親から君の話を聞くのが本当に楽しかったんだよ」  自分の腕の中で、じっと耳を澄ませて話を聞き入っている夕美の髪を、ゆっくりと撫でる。 「僕を救ってくれた女神に会うために、僕はずっと……」  言いながら、千影は女神を、きつく抱きしめた。
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