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「あっ、も、もう……」
いよいよ上り詰めそうになったその時、ちゅという音がして、彼の唇が離れてしまった。
「ここでやめるね」
体を起こした千影が言った。
だが、その行為があまりにも理不尽に思えて、夕美は泣きそうになりながら尋ねる。
「どうして、やめちゃうの……?」
「やめてって言ってたじゃない」
「い、いまさら意地悪言わないで」
半泣きで訴える夕美の顔に、千影が迫ってきた。
「じゃあ正直に答えるんだよ。もっと続けて欲しい? それとも僕のが欲しい?」
見下ろす彼に囚われて、視線が外せない。もう観念する以外に道は残されていなかった。
「千影さんの、欲しい」
彼のモノを受け入れたら、もっと気持ち良くなれるのではという体の欲求が、そう答えさせる。
「夕美が欲しくてたまらなくなるまで我慢するの、大変だったな」
満足げに微笑んだ千影は、枕元に置いていた避妊具を手にし、装着した。
蜜が滴り、迎え入れる準備をしている夕美の入口に、千影が自身を押しつける。夕美の体に緊張が走ったが、それをほぐすように彼が唇を重ねた。
深いキスをしているうちに、再び体が溶けていく。
「んっ、ん……、千影さ、ん」
少しずつ挿入ってきた彼のモノに、感じたことのない痛みを覚えたが、堪えながら受け入れる。ただ必死に彼の背中にしがみつきながら。
「……痛む?」
唇を離した千影が心配そうに尋ねてきた。夕美と同じように、彼は熱い吐息を言葉に混ぜている。
「少し、痛い……けど、大丈夫だから」
目一杯広がっているひだが痛みを感じているが、そこで止めてほしくなくて、笑みを作った。
夕美の言葉を受けて一瞬目を見ひらいた千影が、切なげに眉を寄せる。
「ありがとう……、好きだよ」
「あっ」
千影がグッと腰を進め、夕美の口から声が飛び出す。
裂けるような痛みと甘い快感が同時に押し寄せる感覚に、夕美の頭が真っ白になった。
痛みに堪えながら千影の進みに、目をつぶって耐える。しばらくすると彼の動きが止まった。
彼をすべて受け入れることが出来たのだろうか――。
静かにまぶたを開けると、こちらを見下ろす千影と目が合う。
「……ああ、夕美、好きだ、本当に……、幸せすぎる」
そうつぶやいた彼の目には、涙が浮かんでいるように見えた。
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