17 夢が叶うとき

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 嬉しくてたまらない提案だが、夕美はひとつ息を吸って不安に思うことを口にした。 「私がいても邪魔にならない? 私がいることで、お仕事に集中できなくなるのだけはイヤなの」  千影は常に忙しい身だ。  彼のことを注意深く見ていた夕美にはよくわかっている。そして彼が自分の会社と仕事に誇りを持ち、何よりも大切にしていることも。  だからこそ、自分の存在が妨げになるようなことだけはしたくなかった。  すると、千影が驚いた顔をしてすぐに否定した。 「そんなことあるわけないじゃないか。君がそばにいてくれるだけでモチベーションが上がる。夕美とふたりで会うようになってからの僕は、今まで以上に仕事に邁進しているんだよ」 「千影さん……」 「僕も夕美の邪魔はしない。君の趣味にも口出しをすることはないから、安心して過ごしてほしい」  趣味、というキーワードにドキーンと夕美の心臓が飛び跳ねる。「神原社長を推す」趣味を諦めたくはなかったので、それはありがたいのだが、同じ居住空間にいてバレないだろうか。  ……と、そこまで思った夕美は、心の中で首を横に振った。  そんなことは取るに足らない小さな問題だ。  千影と一緒にいられる幸せが一番だし、彼が望むなら、それを叶えてあげたい。千影の幸せが夕美の幸せなのだから。  夕美は彼の胸に顔を押しつけた。 「まだ何か不安があるの?」 「ううん。あれこれ考えるのをやめようと思っただけ。私は千影さんと結婚を決めたんだもの。一緒にいたいのは私も同じだから、その気持ちを優先させたい」 「じゃあ……」 「うん、よろしくお願いします」 「ありがとう、夕美! 大切にするよ、君のこと。うんと大切にする……!」  歓喜の声を上げた千影は、強い力で夕美を抱きしめ、何度も「ありがとう」を言っては、夕美にキスを降らし続けた。
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