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駐車場に停めてある車に乗り込み、ナビを睨むように見つめながら、この後の計画を口にする。
「まずはアウトドアショップに行って、クーラーボックス買って、強力な保冷剤を用意して、コンビニを探して……よしイケる!」
ルートをナビにぶちこみ、車を走らせる。そしてアウトドアショップで買い物をした後、車に乗った瞬間、千影はふと思いついた。
「……待てよ? もしかして……」
よく考えてみれば、ここ数日の夕美の言動と食欲は、いつもとだいぶ違うのではないか。
つい勢いに乗って夜遅くにラーメンを食べに行ったり、ビーフシチューと格闘したり、こうしてソフトクリームを買いに来てしまったが、これはもしかすると……。
「妊娠、してる……?」
つわりの一種で食欲が増すというのを、以前ネットで見たことがある。これは今の夕美に当てはまっているのでは……?
「そうだったのか! 夕美、すぐに帰るから待ってるんだよー!」
その後、ソフトクリームを獲得した千影は慎重にクーラーボックスへそれを入れ、車を走らせた。もちろん安全運転で。
「ただいまっ! 夕美、これ……っ!」
自宅に戻ってリビングに入り、待っていた夕美にクーラーボックスを差し出す。
「あっ、お帰りなさい、千影さん。なんかあの、いろいろごめんね。毎日食べたいもの、たくさんせがんじゃって。実は――」
「じ、実は?」
思わず身を乗り出して、期待している言葉を待つ。
「生理前で食欲が暴走しちゃってたみたい。今さっき生理が来たの。そしたら急に食欲が落ち着いちゃって」
夕美は、えへへと笑って、自分の頭に手を置いた。
「あ、ああ、そうなんだ。うん、いいんだ、そうか。ソフトクリームは食べられる? 冷えるならやめておこうか」
その場にへたりこみそうになるが、どうにか正気を保ちながら、夕美に笑いかける。
「ううん、大丈夫。千影さんと半分こして食べたいな。本当にありがとう……!」
抱きついてきた夕美にチュッとキスをされて、千影はたちまち舞い上が(以下略)。
この可愛い笑顔に弱いのだ。
この笑顔を見れるのなら、どんなに振り回されようと、夕美のために尽くしまくることを誓う千影だった。
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