天を仰ぐ

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「イアン、俺……この山に登ってみたい。」 この時代でも、山とは壮大で男の好奇心を掻き立てる存在だった。 これまで、幾度となく山を踏破してきたが、それは民のため、そして調査のため。 今回は違った。 山には登らなくても民の生活に支障がないことが分かった。 今のアトスの気持ちは、純粋な好奇心に支配されていた。 「まぁ……俺は止めないけどな、今日はやめておけ。もうすぐ日が暮れるし、いつ野生動物や毒虫に襲われるか分からない。もう少し男手を連れていこう。それに、民の皆に果物があることを教えてやらないとな。」 イアンはいつもこういう役回りである。 アトスが好奇心で行動するのを、いつも冷静に見守り、的確なアドバイスをする。 もしイアンという存在が無ければ、これまでの探索でアトスは既に命を落としてきただろう。 「分かったよ。でも、明日は行きたい。」 故に、イアンのアドバイスは素直に聞くようにしているアトスであった。
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