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「そうだよアトス。ここまでの山の恵みで、俺たちは充分生きていける。欲張って取りすぎなければ子供の代まで確保できる。良いことじゃないか。この先に危険を冒してまで行くことはないと思う。」
「あぁ、俺も同感だ。」
「そうだな。俺たちはここまでにさせてもらうことにするよ。」
共に山を散策してきた男たちも、この先には得るものがないと思ったのか、口々にここで散策を打ち切ろうという話になっていく。
「アトス、お前はよくやったよ。毎度未開の地で俺たちを先導してくれるリーダーだった。本当にみんな、お前の事を尊敬しているんだぜ。」
イアンも、実は仲間たちと同じ意見だった。
これ以上の散策は、もはや意味がない。
豊富な山の恵みを確認した以上、無理して危険に身を晒す必要はないのだ。
「あぁ……わかったよ。みんな、今まで助けてくれてありがとう。この山の幸については、これからみんなで平等に分け、無駄遣いのないようにしよう。出来れば畑を作って増やしていきたいな。」
ひとまず、皆の意見に耳を傾けるアトス。
しかし、彼は感じてしまった。
この荘厳なる山に対する好奇心を。
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