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突然向けられた早紀の視線と言葉に、オレは思わず聞き返す事しか出来なかった。
「翔也はいないの? 彼女とか好きな人とか」
「……」
早紀の“無神経”なセリフに、オレは何も答えず自分のスマホを取り出した。
早紀はオレも加納先輩のように、彼女の画像を持ち出してくると期待してワクワクした目をしていた。
だけどそれは期待ハズレに終わる。
そして、何で早紀の言葉が“無神経”なのかと云うと……
「翔也……?」
「早紀、ちょっと……」
「ん? 何……?」
カメラアプリを起動させたオレは、言葉少なめにそう云って早紀の肩に手を回し彼女のを自分の方へと引き寄せる。
戸惑う早紀を余所に、オレはスマホを少し上に構えて彼女との2ショット写真を撮る。
軽く触れ合う頬と頬……
戸惑いながらも、シャッターを押す瞬間にバッチリ表情を作った早紀には軽く脱帽だった。
「ちょっと、翔也?」
撮った画像を確認していたオレに、早紀は説明を求めるように少し不満そうな口調でそう云って軽く睨みつけてくる。
加納先輩はずっと、不思議そうな面持ちでオレたちの行く末を見守っていた。
「翔也! 聞いて……」
「はい、コレ」
何も答えないオレに、しびれを切らせた早紀が怒り気味に口を開いた瞬間、オレは彼女の言葉を食い気味に返事を返して今撮ったばかりの画像を早紀に見せる。
スマホを目の前に突きつけられて、早紀はキョトンとしていた。
頭上には『?』マークを何個も浮かべながら……
「な、何……?」
「オレが彼女にしたいと思ってる女性」
瞬間、元々くりくりした瞳をした早紀だったけど、その彼女の目が更に丸くなったのは云うまでもないだろう。
そして、まるで時間が止まったかのようにこの場の空気が固まった。
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