気づかないふりをしていた理由

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気づかないふりをしていた理由

「え……」 顔を上げると竜登は 今まで見たことがない怒りの表情を顕にしていた。 眉は吊り上がりゴミを見るかのような目。 唇は強く噛み締められていた。 嫌な予感に背中が粟立つ。 「あんたの好意に気づかないふりしてやったのに また告白してくるなんて……」 いつもの優しい声音とは程遠い低く響く声。 「山田?」 「俺の妹に酷いことをしておいて よく告白なんてできるな!!!」 何を言っているのか理解ができなかった。 「待って! 山田! 落ち着いて? あんた何言ってんの?」 ギリッと歯軋りの音が誰もいない教室に響いた。 「山田天音(あまね)という名前に 心当たりはないか?」 そんな名前聞いたことがない。 だが、一瞬 泣きながら彩華に向かって何かを叫ぶ 女子児童の姿が脳裏に浮かんだ。 山田天音。 心臓がドクンと大きく脈打つ。 どうして気づかなかったのだろう。 竜登と天音が同じ名字だということに。 「山田天音は俺の妹だ!!」
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