気づかないふりをしていた理由

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その事件を機に天音は心を入れ替え 高校生へとなり、恋をした。 でも、竜登が天音の兄だったことを 綺麗に忘れてしまっていた。 「どうやら思い出したみたいだな」 全身から血の気が引いていく。 「ご、ごめんなさいっ!! 謝る。謝るからどうか許して!!!」 「許せるわけないだろう!! 俺はずっとお前への復讐の機会を伺ってたんだ。 本当はお前を殺そうと思っていた。 だけど、それだとお前と同類になってしまう。 だからお前が俺のことが好きだとわかったときに 馬鹿な男子を演じて告白をスルーしてきた。 だけど付き纏われるのもうんざりだから 今、お前を断罪することにしたんだ」 これは一体誰であろうか。 声を荒げる竜登はいつもの優しい面影すらない。 「ど、どうしたら、許してくれるの?」 「……死んでくれ」 どん底に突き落とされる彩華を 冷たく見下ろす竜登。 「え」 「誰にも見つからないところ、 そうだな、あの山で密かに死んでくれよ。 そうしたら許してやる」 そう言って竜登が指差したのは 窓から見える深緑色の山だった。
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