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『もしもし?大丈夫?また悲しくなった?』
先日と同じ優しい声が最初からそう言った。
ほっとした。だけどその無条件の優しさにさすがに申し訳なくなった。
『ごめんなさい、私…』
『いいよ。俺がかけていいって言ったんだから。』
かけたものの、何を話そう…。
『今日図書室でレポートやってたら寝ちゃってさー』
彼が何気なく話し出した。
…学生さんなんだ。
『大学行ってた?がむしゃらに勉強したって言ってたよね。何の勉強してた?』
『…私はね』
自然に話が進んでいく。
声のトーンが、口調が、相槌の抑揚が心地良い。
話していると、私や翔哉と同じような理系の勉強をしているのだとわかった。
勉強のやり方の話、卒論の話…そのうちお互いに差し障りの無い程度に自分のことを話した。職場の場所や利用駅、仕事終わりに良く行くカフェ、学校の場所などなど。
すべて信用したわけじゃない。同じ都内だったがお互い名前と顔は明かしていないのだから大丈夫だろう。
リアルな勉強の内容や利用駅名を話して電話の向こうの彼が現実的に身近になり、また、心の穴が埋まった。
…埋まったどころか高鳴りさえ感じた。
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