クソみたいな山

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 黒雲山から大阪に向かう列車に再び乗り込んだ蔵馬と高坂は、封印を完了させるために戻る道中、次なる手がかりを求めていた。鬼灯の缶詰を手に入れたものの、それを使いこなすためにはさらに強力な魔力が必要であると、マスオから忠告されていたのだ。  列車の中、窓の外に広がる荒野を眺めながら、蔵馬は深く考え込んでいた。その静寂を破るように、高坂が口を開いた。 「蔵馬さん、次はどこに向かうべきですか?」高坂は不安げに尋ねた。「缶詰を手に入れましたが、これだけでは不十分ですよね」  蔵馬は静かにうなずき、ポケットから古びた手帳を取り出した。それはかつて山荘が所有していたもので、封印に関する知識が記されている貴重なものだった。ページをめくると、ふと目に留まったのは「ローズヒップ」という名前だった。 「ローズヒップ…」蔵馬は呟いた。「これが次の鍵かもしれません。ローズヒップは封印に使われる重要な薬草です。昔、津田梅子という女性が、黒魔術を封じるためにこの草を育てていたと伝えられています」 「そのローズヒップはどこにあるんでしょうか?」高坂が尋ねた。 「その場所は分かっていませんが…」蔵馬はさらにページをめくり、何かを探しているようだった。「どうやら、ある場所にその手がかりが隠されているようです」  蔵馬が手帳をさらに読み進めると、一枚の古びたプリクラが挟まれていた。それは驚くべきことに、若き日の津田梅子と推測される女性が写っているもので、背景には荒野の中に立つ古びた洋館が映っていた。 「このプリクラ…」高坂は目を細めてそれを見つめた。「もしかして、津田梅子が封印を行った場所ではないですか?」  蔵馬はその可能性を考え、頷いた。「そうかもしれません。この洋館を探す必要がありますね。ローズヒップがそこに残されている可能性があります」  二人は大阪に到着すると、古びた洋館の場所を探すために手分けして情報を集め始めた。やがて、一つの手がかりが浮かび上がった。それは、かつての女優、マリリンモンローが日本を訪れた際に滞在したという洋館が、荒野に残っているというものだった。 「その洋館が、津田梅子が使った場所だとしたら…」高坂は興奮気味に話した。「そこにローズヒップがあるはずです!」  洋館へと向かう前に、蔵馬と高坂は必要な物資を整えるために、大阪の街中で準備を始めた。高坂は一枚のラガーシャツを手に取り、蔵馬に手渡した。「これを着てください。山の冷え込みを考えると、少しでも暖かい方がいいですから」  蔵馬はそのラガーシャツを受け取り、感謝の意を込めて微笑んだ。「ありがとう、高坂さん。準備ができたらすぐに出発しましょう」  二人は大阪の喧騒を背に、再び荒野へと足を運んだ。長い道のりを経て、ようやくその洋館に辿り着いた。そこには、ローズヒップの薔薇が美しく咲き誇り、月明かりに照らされていた。 「ここが…ローズヒップの薔薇園…」蔵馬はその美しさに一瞬見惚れたが、すぐに冷静さを取り戻した。「これで最後の封印が完成するはずです」  しかし、その瞬間、館の中から不気味な影が現れた。それは人の形をした妖怪で、鋭い目つきで二人を見下ろしていた。 「この地に足を踏み入れる者、許さぬ…」妖怪は低い声で呟いた。  蔵馬はその妖怪を睨み返し、覚悟を決めた。「封印のために、この地を守る必要があるなら、あなたを倒すしかない」  荒野に響く風の音が二人の決意を後押しし、蔵馬と高坂は妖怪との対峙に臨んだ。封印の完成が近づく中、彼らの戦いはますます激しさを増していくのであった。
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