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「次はアクセサリーを見に行こう」
そう言ってさり気なく私の手を握る辻さん。
今回は鳥肌が立たない。くすぐったくて、温かい手の感触が心地良い。
「辻さんの手、……気持ち良いです」
「はうっ!?」
奇声を上げる辻さんを見上げ苦笑する。
「男の人と手を繋ぐのって初めてで。この間はびっくりして耐性がなかったけど、こんなに温かくて心地良いと思いませんでした。ずっと繋いでたいです」
「……君ってやつは……」
ぷしゅーっと、辻さんの頭上から湯気が出ている気がする。
そして私の手を握る力が強まった。
知らなかった。デートがこんなにも楽しくて、温かく心を包み込むものなんだって。
「あ……辻さん、あそこ寄りませんか?」
指差したのはゲームセンター。普段はあまり行ったことがないけれど、興味がある。その理由は。
「ドラマで、ゲームセンターデートというのがあったんです。何気ないひとときが素敵だなって」
辻さんにとっては子供染みたデートかもしれない。
それなのに彼は、全てを受け入れるように優しく微笑む。
「構わない。真弓のしたいことは全部やろう」
そんなふうに言ってくれる辻さんに、また胸が温かくなる。
最初は気難しくて高飛車な人かと思ったけれど、本当はとても優しい人なんだってわかってしまった。
「やっぱり若い人多いですね」
入って早々、周りの学生さん達に圧倒されて気後れする。
だけど辻さんは、私の手を引いてどんどん進んで行った。
「周りのことは気にせず楽しもう」
楽しそうに笑う姿が眩しい。
「これやってみないか? 勝負しよう!」
カーレースのゲームを指差す辻さんに心が弾む。
「やりましょう! 本気出します!」
辻さんはニヤリと微笑み、座席に座った私の耳元で囁いた。
「俺が勝ったらキスね」
そんな言葉に、流石に私の心臓も飛び跳ねる。
全身の血液が沸騰するように熱くなり、そんな自分に驚いた。
もしかして、この感覚が……
「始まるよ」
辻さんの声に我に返って画面を見つめる。
スタートの合図と共に私達はハンドルを握った。
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