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何も言わない太一をみかねて、私はついに動くことを決めた。
それをいつもの二人だけの帰り道で話そうと。
「ねぇねぇ、最近どうなのよ?」
「……どうって? 特に何もないよ」
「ふーん。 気づいてないかもしれないけど、最近の太一は変だよ。 みんなはね、太一が誰かに恋しているかもって言ってるの」
「え!? そんな、マジか!?」
太一は、目を見開き、思わず手で口をふさいで驚いていた。
とぼけることもせず、ポーカーフェイスでその場を乗り切ることもせず、彼の純粋さは昔から変わらない。
「ねぇ、 私にだけは教えてくれてもいいんじゃない? 幼馴染なんだから。ね?」
なかなか踏み込めないでいる太一のために、私に言いやすいように環境を整えてあげた。
太一は、なにかを思案する顔になり、それと同時に二人の足取りは止まった。
初めて生まれた数秒の沈黙。
あと一回の一押しが必要ならと、口を開きかけた時だった。
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