奇妙なる夏の夜

「ようこそ、『千年涼亭』へ」

突如として現れた初老の店主が、にこやかに僕に声をかけてきた。彼の笑顔には、何かしらの秘密が隠されているような気がしてならない。僕は、少し警戒しながらも、店主に導かれるまま奥の席に座った。

「ここでは、涼を楽しむための特製飲み物をお出ししております。ごゆっくりどうぞ」

店主が差し出したグラスには、透き通るような青い液体が入っていた。それは、まるで夏の夜空を閉じ込めたかのような色合いだった。僕は興味本位でその飲み物を一口飲んでみた。

途端に、僕の体は一瞬で冷たさに包まれた。まるで、北極の氷の中にいるかのような感覚だった。しかし、その冷たさは決して不快ではなく、むしろ心地良いものだった。僕は思わず、もう一口、そしてまた一口と飲み干してしまった。

「これが、この店の秘密か…」

僕は不思議な感覚に酔いしれながら、ふと店の外を見た。すると、そこには見慣れない光景が広がっていた。京都の街並みは影を潜め、代わりに古びた街道が続いている。空には満月が煌々と輝き、風はどこか懐かしい香りを運んできた。

「これは…一体？」

僕はすっかり困惑していた。しかし、その時、店主が静かに微笑みながら言った。