第参夜 クーリング・オフ

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私の右手が疼く… 私は手にありったけの力を込めた。 すると、何やら手の先に野球ボールくらいの黒い玉ができ始めた。 「うわ。なにこれ…」 「それが夜の力の源じゃ。 それを、体の中心、へその上辺りに込めてみろ。」 黒玉をへその上に移動するように念じる。 すると、黒玉は消え、腕を通り、胸、腹へと、力が移動するような感覚を覚えた。 そして、へその中心まで移動した、のだろうか。 「ほう。昔はそこで苦戦する奴が多かったのじゃが、なかなかやるのう。それならば、もう浮けるはずじゃ。試しに飛んでみろ。」 そんないきなり言われても… 私は、思いっきり地面を蹴った。 「飛べ…!」 その時、お腹の辺りにあった力が、ぐんと私を持ち上げた。 「うわあ!?」 突然の出来事に驚くも、気づくと、 私は宙に浮いていた。 「おお…すごい…!」 空を飛べたことにテンションが上がる。 「上出来じゃ。その力を使い、階段を使うことなく神社まで来い。それができれば、あとは大抵のことはできるようになる。儂は先に行き、お主がちゃんと飛べるか見ておこう。」 夜の神はそう言うと、スーっと神社まで登っていってしまった。 「早いなぁ…」 私も負けじと、夜の神の後を追う。 「うわっ!」 危うく地面に落ちるところだった。 力の制御を間違えると、落ちたり、変な方向に回転したりするようだ。 それでも、なんとか力をコントロールし、山の頂上にたどり着いた。 「やっと来た…」 「う〜む。これでは歩くのと大して変わらんではないか。次からは、もっと速く飛べるようにするんじゃぞ。」 「えぇ…」 自分は必死で飛んでいたので気づかなかったが、 そんなに遅かったのだろうか。 取り敢えず、降りようとする。 空を飛ぶのは、体力は使わないものの、夜の力を消耗すると疲労感があった。
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