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「では、しっかり掴まっておくんじゃぞ。」
夜の神は、私をおんぶした体勢のまま宙に浮き、山を一直線に下った。
そのまま鳥居をくぐり、自分の家の前に帰ってきた。
「…ありがとう。」
お礼を言い、夜の神の背中から降りる。
「さて、早速始めよう。」
「早いね…もっと外の空気とか吸いたいんだけど…」
「もうじき夜が明ける。時間がないのじゃ。
まず、儂がやった時のように手を合わせるのじゃ。」
言う通りに手を合わせる。パチンという音がした。
「手を合わせるのと同時に、鳥居が立つように念じるんじゃ。これはかなり力を使うから、あらかじめ儂がその分の力を分けてやろう。」
夜の神が私に触れると、力が体中に流れ込んでくる。
「準備はできた。やってみろ。」
「出来るかな…」
私は、勢いよく手を合わせ、鳥居が立つように強く念じる。
その時、パンッという私の合掌の音と共に、
目の前に鳥居が音もなく現れる。
「おお…すごい…」
「まだじゃ。その鳥居に向かって、「俗世と神社を繋ぐ鳥居、此処に開門」と唱えるのじゃ。声は極力抑えるんじゃぞ。この呪文は、誰かに知られたらまずいものじゃ。この呪文が他者に知られてしまうと、誰でも神社に入れるようになってしまう。」
私は小さい声で呪文を呟いた。
「俗世と神社を繋ぐ鳥居、此処に開門…」
すると、鳥居の内側が渦を巻き、神社との入口が開通した。
私の中の夜の力がごっそり減った気がした。先程よりはマシだが、若干の疲労感が私を襲う。
「よし。最後の技もできたようじゃな。
お主、筋が良いな。一回でこの技を出来た者はなかなかいないぞ?」
「お褒めに預かり光栄です夜の神…」
「何じゃその喋り方は。
では、そろそろ日の出じゃ。儂は、お主の作った鳥居で神社に帰るとしよう…
そうじゃ。言い忘れるところじゃった。」
「何?」
「3日後の夜10時に、ここに集合じゃ。理由はその時に話す。それまで、しっかり修行に励むのじゃぞ。」
「わかった。」
「それじゃ、またの。」
「またね。」
別れの挨拶を済ませ、夜の神が鳥居をくぐった後、私も帰宅しようとした、その時だった。
「眩しっ!?」
突如、眩しい光が私を照らした。
日の出の光にしては眩しすぎる。
私は、光の正体は何だと光源の方向を見た。
「やあやあ。はじめまして、かな?」
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