第肆夜 太陽神と鮎

5/10
前へ
/28ページ
次へ
「あ、それと、ポッピーと黒ポッピー、焼酎、あと氷が欲しいな。」 「相変らずツウだねぇ。ハーフ&ハーフだろ?」 「そうそう。鮎にはポッピーが合うと思って。」 「分かってるねぇNLちゃん。」 店主は酒棚からポッピー、焼酎、冷凍庫から氷を、クーラーボックスに入れて私に手渡した。 「5000円だよ。」 「はい。」 私は財布から野口を5枚取り出した。 「ありがとさん、また来てよ。」 「ありがとう。」 挨拶を交わし、店の外に出る。空を見ると、日は若干傾いていた。 「うっ…」 太陽が、一瞬豪の顔に見えた気がした。 「いつでも見てるよ」と言いたげに。 家に帰り、すぐにお酒を冷蔵庫に入れる。 氷はポッピーに入れるのではなく、冷凍庫に入れてあるジョッキに突っ込み、さらに冷やす。 ポッピーは氷を入れると風味を損なうからだ。 だからジョッキをキンキンに冷やす。 しばらく待つので、その時間に鮎を揚げるための下処理をする事にした。 アユの鱗を取り、水を張ったボウルの中で洗う。 キッチンペーパーで水気を拭き取り、パラパラと塩をふって少し置き、水分が出てきたら薄力粉をふる。もう一つのボウルに溶き卵、冷水を入れて混ぜ合わせ、薄力粉を入れ、粉気が少し残る程度にさっと混ぜ合わせる。 次に油を準備だ。前使っていた揚げ油をろ過する。まだ使用してそこまで経っていないはずだし、大丈夫でしょ。 揚げ物用の鍋に油を注ぎ、170℃位になるように火をかける。 油があったまる間に冷凍庫を開けると、ジョッキは油と正反対に、0°近くまで下がっていた。 「よし。」 少し待つとコンロから、油が170℃になったよ、ということを知らせるピロリン♪という音が鳴った。 ワクワクしながら、下処理した鮎をさっきの衣にくぐらせる。 そして…
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加