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第弐夜 契約
「おぉ…」
鳥居をくぐり、最初に飛び込んできた光景は、長い長い階段だった。
階段の両端には灯籠がついており、闇夜を照らすその光は、幻想的な雰囲気を出していた。
あたりを見渡すと、ここがどこかの山の入口であることがわかった。
階段の上にある鳥居には草が根を張っていて、くすんだ赤が鳥居の年季を感じさせた。
「ほれ、早く登るぞ。」
そう言うと夜の神は、階段を登らず、宙に浮いて階段の上まで上がっていってしまい、あっという間に見えなくなった。
「ずるい…」
千里の道も一歩から。
私は階段の一段目に足を伸ばした。
〜数時間後〜
「はぁ…はぁ…」
「もう疲れてしまったのか?だらしないのう。若者ならもっと元気を見せんか。」
「無理言わないでよ…」
階段は合計で約10000段近くあり、私の足を棒にするには容易な段数だった。
「段数を数える暇があるんじゃから、そこに使うエネルギーを足に使えばよかったのではないか?」
脳を動かしとかないと失神してしまうからだよ…
「まあ良い。ちと予定より遅くなったが、ほら、あれが儂の神社じゃ。かっこいいじゃろう?」
夜の神が指差す方向を見ると、そこには一般人が想像するような神社があった。すごく立派というわけでもなく、廃れているというわけでもない、普通の神社という感じだった。
ただ、夜に見るからなのか、灯籠の光に照らされた神社は綺麗に見えた。
横の方にある、おそらくこの神社の名前が書いていたであろう石柱は、風化していて読めなかった。
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