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「うっ…」
図星だった。
他の人の人生を果実に例えると、私の人生は寄生虫に食い荒らされたようにスカスカだった。
「お主、夜が好きなのであろう?今のうちに契約を結んでおかないと、大変なことになるぞ。」
「そういえば、さっきから聞いてたけど、「夜に魅入られる」って何?」
「ああ、言い忘れていたな。まずそこから説明せねばならんか。
「夜に魅入られる」とは、まぁ簡単に言うと、「夜に喰われる」のじゃ。」
「夜に…「喰われる」?」
「そう。人が、昼より夜の方が起きている時間が長かったり、悪事に手を染めたり。夜に魅入られる理由は色々あるが、全ては何かしら「夜」に関わっておる。そういうことを長く続けている人間が、夜に魅入られるのじゃ。
夜に魅入られた人間は、より深い「夜」へと引きずり込まれる。「夜」に引きずり込まれたら基本的に二度と帰ってこれない。これが、「夜に喰われる」ということじゃ。わかったか?」
「…多分。」
「不安じゃのう。いいか?
「夜に魅入られたら最後、夜に喰われる。」
これだけ覚えてれば良い。」
「わかった。」
「つまりじゃ。お主は夜に魅入られないようにしたい。儂はお主を助ける代わりに力を貸してもらう。これは、「うぃんうぃん」、と言うのであろう?」
「私は夜の力を借りる方なのに?」
「ええい、うるさい!話が進まん。」
夜の神は、さっきのお札を再び取り出した。
「日本は行方不明者が年々増えておる。今の時代は、夜に生きる者が多くなった分、それだけ夜に魅入られる者も多くなった。
儂は、夜が好きな者が死んでしまうのは嫌じゃ。
どうか、お主の力を貸してくれ。」
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