ヘルプマーク

1/1
前へ
/245ページ
次へ

ヘルプマーク

今日はせっかく早起きしたから、かねてよりどうするか悩んでいたことを相談する為に市役所まで、怖々、サングラスを掛けマスクをし、日傘をさして午前中に行ってきた。 ずっと引きこもりだったので普段なら歩いて15分の道のりを40分かけて……休み休みノロノロと歩いた。 それほどまでに私の足の筋力も体力も衰えていた。 なら車かタクシーで行けばいいだろう?と皆さまは思うかもしれない。 しかしながら私は強い薬を何種類も飲んでいるので主治医から車の運転はしないように言われてしまっていた。 私に処方されている薬には副作用で強い眠気が生じる可能性が高いものが何種類か含まれていたからだ。 それならば……と私は車の免許証を2年前に返納したので今は自分の車を持っていない。 タクシーにしたかったが所持金が1000円もなかったのでタクシー代が無く、仕方なしに歩くことにしたのだ。 これまた2年前に記憶が飛ぶ程の躁状態になった私はハイになり、我が家の全財産を使い果たそうとしていたらしい。 それから金銭管理は旦那がすることになり、私には極力、お金を持たせないと旦那に言われたのでこの有り様なのだ。 食事もろくに食べられていない私は時々、目眩を起こしてもいた。きっと貧血。暑さで吹き出る汗と冷や汗で私の黒のTシャツは市役所に着く頃には、縛れば汗が滴り落ちるのではないかというくらいにビショビショになっていた。 持参したタオルで吹き出す汗を拭きながら、私は、市役所の受付の近くにある椅子に座り少し休んでから福祉課へと向かった。 私は精神障害手帳2級持ち。 息子は療育手帳B判定持ち。 どちらも申し出ればヘルプマークを無料で貰える。 しかし私は躊躇っていた。 私はともかく……。 ヘルプマークを息子が通勤に使っているナップサックにぶら下げたら、返って息子は目立ち、また何らかの被害に合うのでは?と疑心暗鬼になっていたからだ。 実は息子は障害ゆえのトラブルが多かった。 しかし見た目には普通の成人男性。 傍から見たら少し変わった(というのも意味不明な言葉を仕切りなしに口にする息子なので)大人にしか見えないだろう。 その『変わった』部分が気に障る人も多かった。 よく殴られたり、恐喝されたりしてきた。 その度に私は警察署に被害届を出したりしていたが埒があかなかった。 そこで思いついたのがヘルプマークの札?なのだが……福祉課で相談してもなかなか貰う決心がつかなかった。 その時だった。 「今の時代は昔と違い、ヘルプマークの認知度も上がりました。きっと、あなたのことも息子さんのことも周りの方々が手助けしてくれますよ?」 と、相談していた女性職員の後ろから割賦のいい初老の男性職員が優し気な笑顔で私にそう言った。 そこで私は決心した。 息子にもヘルプマークを持たせようと。 それから、その初老の男性職員の助言でタクシー券という物も無料でもらった。 私も息子もタクシー券を貰う対象者に該当するのだとか。 タクシー会社にもよるが、どうやら1〜2割りほどタクシー代が安くなるとのこと。 私は相談に乗ってくれた女性職員と初老の男性職員に礼を述べると、自分のスマホでタクシー会社に問い合わせ、何とか私が持っている小銭でタクシーに乗せてもらえるとのことだったので予約し、タクシーが到着するのを市役所の玄関窓口で待った。 ああ、市役所に頑張ってきて良かったと私は思った。 今は何かと大変な時代だが皆んな頑張っているんだ。 私も少しずつ少しずつ回復に向け前に進みたい、うん。 なう(2024/08/21 14:59:19)
/245ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加