2 平成18年8月 セピア色の写真と思い出と

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2 平成18年8月 セピア色の写真と思い出と

 「ひいおばあちゃんにも、可愛い弟がいるんだよ」  おばあちゃんはそう言って、幼い私と弟の賢一(けんいち)の頭を撫でる。  私と弟はおばあちゃんに頭を撫でられるのが嬉しくて思わず笑っちゃう。  そして賢一と二人で言う。 「ぇえーーー!!! ひいおばあちゃんの弟、見たことなーーーーーぁぁい!!」  私達に言われて、少しだけ寂しそうなひいおばあちゃんの顔。 「昔のことだからねぇ。写真があまり残っていないねぇ」  引き出しから古びたアルバムを出して広げる。 「おばあちゃんの弟は賢治(けんじ)と言ってね、五才違いだから、ちょうど葉瑠(はる)賢一(けんいち)と同じくらいの年の差だねぇ」  優しい笑顔でアルバムを開く。 「ひい婆ちゃんと賢治は仲が良くてね、夏になると、畑仕事の手伝い合間によく二人で虫取りしたもんさ」  ひい婆ちゃんは一枚の写真を指差す。  虫取り網を持った子どものひいばあちゃんと、虫かごを持って立っている男の子の写真があった。  カラーじゃない。  セピア色の古い古い写真。  ひい婆ちゃんと男の子は笑っている。  これが、ひい婆ちゃんの弟……。  私と賢一はひい婆ちゃんのアルバムををじいっと見つめた。  夏のある日のひい婆ちゃんと賢治さん。  見つめていると、写真から蝉の声と小さいひい婆ちゃんと賢治の笑い声が聞こえてくる気がした。  あの日。  ひい婆ちゃんは私たちに初めて弟の事を話してくれた。  私達にとってはひいおじちゃんとひい婆ちゃんの楽しく悲しい思い出を。
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