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6 平成18年8月 玉音放送(※)ってなぁに
私と弟の賢一に話をしているひぃばあちゃんの瞳に涙が浮かぶ。
「昭和20年8月15日、居間で昭和天皇の玉音放送を聴いたの。日本は戦争に負けたから。玉音放送というのは、天皇陛下から国民へそれを伝えるための放送だったのね」
昭和天皇の玉音放送は正午に始まった。
ラジオから天皇の声が響く。
聞き取り辛い箇所もあったが、人々は懸命に耳を傾けた。
「朕深ク世界ノ体制ト帝国ノ現状トニ鑑ミ、非常ノ措置ヲ以テ時局ヲ収拾セムト欲シ茲(ココ)ニ忠良ナル爾(ナンジ)臣民ニ告ク……」
(私は、深く世界の情勢と日本の現状について考え、非常の措置によって今の局面を収拾しようと思い、ここに忠義で善良なあなた方国民に伝える……)
玉音放送の間中、ひい婆ちゃんは泣いていたのだと言う。
こうなるならなぜ、もう少し早く戦争を終わらせなかったのだろう。
「……今後帝国ノ受クヘキ苦難ハ固ヨリ尋常ニアラス爾臣民ノ衷情モ朕善ク之ヲ知ル然レトモ朕ハ時運ノ趨(オモム)ク所堪ヘ難キヲ堪ヘ忍ヒ難キヲ忍ヒ以テ万世ノ為ニ太平ヲ開カムト欲ス……」
(……今後日本の受けるであろう苦難は、言うまでもなく並大抵のものではない。あなた方国民の本当の気持ちも私はよく分かっている。しかし、私は時の巡り合わせに従い、堪え難くまた忍び難い思いをこらえ、永遠に続く未来のために平和な世を切り開こうと思う……)
憤慨している者も多くいた。
せめて、あの子の敵を取りたい。
たとえ、大和民族が途絶えても降伏などせずに、戦い続ければ良かったのに、と。
「それは激戦地を知らない者の言い分なのよね。あのとき、怒りを持たなければ、前に進めなかったのかも知れないけれど」
涙を拭うひぃ婆ちゃんの気持ちは、昭和当時に戻っているようだった。
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