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輪廻の狭間で
目が覚めると満点の星空が透き通った水面照らし、美しくもその光景が何処までも地平線の様に続くそんな場所。
俺はこの場所が大好きで大嫌いだ。
「あぁ、また帰ってきちゃった…」
「おかえり。これで何回目だろうね?」
その言葉に振り向くと、オレンジ髪と白髪がグラデーションになっている少年はそんな綺麗な場所に似つかわしくない悲しそうな表情で立っている。
それもそうだろう。死んだ皆と俺の命を代償に死ぬ度に俺を引き戻すのが彼の役割。彼…満輝は神様の様な存在で、何度もこの光景をこの世界で見ている。
でも俺はこの場所の記憶だけはしに戻るまで残らない。そう、この場所で解に気づいても無意味と言う事である。
「また、彼等を助ける事が出来なかったよ…でも、次は頑張るからさ!」
「光…」
俺は満輝を悲しませないようにこの場所で出来るだけ笑顔でいる。だけど、全てを見ている彼には全てお見通しでさらに沈んだ顔になる。
「も〜!そんな顔してたら俺も悲しいって!ね?もう1回…あと1回頑張ろ!きっといい未来が見えてくるから!」
「…うん。光、無理しないでね?僕は何度だってこの場所で待ってるから」
そう言って俺の頭を撫でる満輝の手は小さい見た目からは想像のできないような安心感を覚える。
「うん!まあ、もうそんなに死にたくもないし殺したくもないけどね!だから頑張るよ!最高の未来を掴み取るために!」
「あははっ…そうだね、じゃあ頑張って行ってらっしゃい光!」
満輝は笑顔で俺の背中を押してある方向を指さすとその場所に扉が現れる…
「…っ」
その場所に歩いていくと過去の凄惨な記憶が蘇ってくる。
嫉妬、後悔、怠惰、憎しみ…苦しみ…過去の色々な感情や記憶が俺の中に入ってくる嫌だ。もう戻りたくない。楽になりたい。
「光。取り戻したいんでしょ?皆との未来を、そしてーーの笑顔を。」
背後から満輝の声が聞こえる。さっきまでとは違う淡々とした無表情な声で…
「光、君はこの場所にいるべきじゃない。あの場所でもう1回…あと1回でもいい。足掻いて取り戻して見せてよ。彼等の未来を。」
怖いほど淡々として冷たいその声は、この苦しい状況だと冷静さを保たせてくれる。きっと彼もそれを分かっているのだろう。俺はいちど満輝に向き直る。そして
「ありがとう!行ってくるね!満輝!」
笑顔で手を振り扉を開けて一気に駆け抜ける。光に包まれる中、暗くも輝く世界から優しい声が聞こえる。
「行ってらっしゃい光…無茶だけはしないでね」
また、何気ない朝の日差しが差し込むいつもの時間。ぴぴぴ…と鳴り響くアラームを止めて ひと伸びした後に制服に着替え気合いを入れる。
「さあ、始めようか!おわらないエンドロールを!」
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