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「おい、小僧、願いが叶って満足か?」
ランプの魔人ゾフィ―が言った。
「なに言ってんだい!」
ハリーは地団太を踏んだ。
「願いなんかちっともかなってないやい!」
「いいや。小僧。儂はお前の願いを悉く叶えてきたはずじゃ」
ハリーは不平を言い始めた。
「僕はこの目で世界を見たかった。世界一周したかったんだ!」
「だから、儂は地球儀を出したんじゃ。お前は自分の居場所もその大きさも知らんじゃろ」
「...」
「僕は学校でみんなの人気者になりたかったんだ!」
「だから、きのう一日お前をウサギに変えたんじゃないか。どうだった⁈小屋の居心地は。お前はみんなの気まぐれに振り回されっぱなしだったじゃろ」
「...」
「僕もみんなのようにスーパーファミコンで遊びたかった!」
「だから、花札をあげたんだぞ。自ら頭を絞り、ハラハラドキドキしながら遊べる究極の頭脳ゲームじゃ。実力も必要だが運にも左右される人生そのもの。お前を磨くにはもってこいじゃ。加えて買い足し不要、エネルギー不要。この先もずうっ~とエコじゃ」
「...」
「僕はお金持ちになりたかったんだ!」
「だから、儂はお前の左手に鉢、右手には鐘を持たせたんじゃ。どうじゃ?それで街を歩けば金を恵んでもらえるかもしれん」
「...」
ゾフィーとハリーはこんなやり取りを何度も繰り返していた。ハリーはべそをかき始めている。
「小僧。もうおしまいか?あと1回だけ願いを聞いてやる」
ハリーは俯き加減になって目を閉じた。やがて、顔を上げるとゾフィーの目を見てキッパリ言った。
「もういい。僕は今のままでいい」
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