初恋の卒業式

2/5
前へ
/140ページ
次へ
 「あのっ!」  エレベーターホールへと足早に向かっていた颯真は、後ろから聞こえてきた声に立ち止まる。  振り向くと、先程まで右隣の席に座っていた女性が、紙袋を手にタタッと走り寄って来た。  「こちらをお忘れです」  そう言ってホテルのロゴが入った引き出物の紙袋を手渡す。  「ああ、そうか。すまない。ありがとう」  「いえ。お仕事お忙しそうですね。どうぞお気をつけて」  「ありがとう」  女性は柔らかい笑みを見せると、両手を揃えて小さくお辞儀をしたあと、ふわりとオレンジ色のワンピースを翻して軽やかに扉の向こうに消えた。
/140ページ

最初のコメントを投稿しよう!

920人が本棚に入れています
本棚に追加