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「お義父さん……少しだけでしたが家族になれて嬉しかったです、ありがとうございました」  お義父さんはリビングのいつもの場所にいる、浮かべた涙を見られたくないのか新聞を読むふりをして庭の方を向いた。 「唯夏さん、お姉ちゃんできたの嬉しかったです。ほんとうにごめんなさい」 「真希ちゃん、私も妹ができたの嬉しかった、ありがとね」  そして玄関に向かう、そこにはいつもと変わらない毅然とした態度のお義母さんがいる。 「真希は部屋に戻ってなさい」 「はいはい」そう言ったあと真希ちゃんは私にこっそりと耳打ちした「お母さんうちらに涙見られるの嫌なんだよ」そう言って真希ちゃんはクスッと笑った。  お義母さんとふたりきりになった玄関、ふたりで外に出る。 「お義母さん、短い間ですがお世話になりました。こんなことになってしまいましたが、いろいろしていただいたご恩は忘れません」  息子のお金を根こそぎ取って、もしかしたら逮捕まで追い込む女のことを許してはもらえないだろう。  お義母さんとはいろいろあったけど、最期の最期、私を庇ってくれたことは一生忘れない。
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