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突然、お義母さんが私にハグをした。私は驚きすぎて体が硬直した。
だけど、その直後、お義母さんから発せられた言葉になによりも驚いた。
お義母さんは泣いていた。声が震えている。
「息子は息子だからね、どんな子でも可愛いの」
「それはもちろんそうでしょう、そうだと思いますよ」
「人生でいちばん辛いのってなんだと思う?」
「えっと、なんでしょう?」
「子どもに先立たれることよ」
「え?」
私は少し顔を引いてお義母さんの顔を見た。
「私は間に合わなかったの、だけどがんは初期だった、あなたが助けてくれたの? ほんとうにありがとうね、前の世界であんな最期だったのに、侑哉を、侑哉の命だけは助けてくれてありがとう」
そう言って涙はとめどなく溢れ出た。そして何度も何度も私にお礼を言った。がん検診を促したのは恭介くんだろう。
恭介くんが言っていた侑哉の分の死に戻り、これお義母さんだったんだ。
思えば今回お義母さんとの距離は良好だった。愛し方が分からないと言われたけど今回は不器用なりにも私のこと、一生懸命愛してくれていたんだ。
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