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「お腹痛かったらしくて、会社のトイレじゃなくて早く家に帰りたかったみたいっす」  深刻な話かと思えばそんな話で思わず声を出して笑った。そしたら斎藤くんも一緒になって笑って会社の外でふたりの笑いが響き渡る。  そして正面を向いたときにギョッとした。久美乃がいたのだ。   「はっ」  思わず息を飲む。 「どうしたんですか? あ、電話です、いっすか?」  さすがに恐怖を感じ斎藤くんの腕に掴まった。斎藤くんはかかってきた電話を取った。  すると久美乃はゆっくりとこちらに近づいてきた。 「恋、ですか?」 「は?」 「いいご身分ですね、私たちを引き離しておいてあなたもう恋愛なんてしてるんですか?」 「誰ですかこの人」  久美乃と私の間にスマホ片手に斎藤くんが割って入る。 「守ってもらってるつもり? あなたが恋愛? あなただけ幸せになるなんて許せない、どうして私だけこんな目にあってあなただけ愛されるの?」  ここで私はひとつ気がついた。  それはとても大きなことで、そのことに今まで気づかなかった自分を恥じたくらいだ。
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