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人通りの激しいこの場所だと目にもつくということで少し端に寄って話す。
ふたりきりじゃなくてよかった。さすがにあのことを思い出す。私を殺したあの日のことを。怖くて足が震えるけど、それをバレないように必死に踏ん張った。
どれくらい時間が経っただろう? そんなに経ってはいないけど平行線の会話の中私を呼ぶ声がした。
「唯夏ちゃん」
その声に三人全員が顔を上げた。
そこには、到底“そこそこ”とは言えない高身長、イケメン、高収入のハイスペ男子が駆け寄ってきていた。
「恭介くん?」
「斎藤くんと電話しててなんかあったかと思って、来ちゃった」
息を切らし目の前まできた。
私は思わず破顔する。だって久美乃が今までに見たことないくらいの顔をしていたから。
「この人、さっき言ってた人」
そう言って恭介くんの腕に絡まると久美乃は声を荒らげて近寄ってきた。すぐに斎藤くんと恭介くんに取り押さえられる。
そして会社の警備員が駆けつけて連れていかれた。
久美乃の戦意は完全に喪失していたと思う。項垂れたように両脇を抱えられて去っていった。
――バイバイ、もう二度と私の前に現れないで
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