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 偽装出張の日が終わり恭介くんと別れる日、ビジネスホテルの部屋の中、いついなくなるかはわからないと恭介くんが言う。 「ならこれが最後かも」 「そしたらポンコツだと思うけどここの世界の俺を頼って、全部話せばきっと俺のことだから信じるよ」 「わかった」  触れ合うことはないまま別れる。 「恭介くんが最初に出て、私遅くなるって言ってるからもう少しここにいる」 「わかった」  恭介くんは先に進む。ドアのところまで進んでくるりと振り返る。 「ありがとね」 「探偵からのいい返事、待ってる」 「また会えるの信じてる」  真っ直ぐな目でそう言ったら恭介くんは少し困ったように笑った。 「そんなこと言うと抱きしめたくなる」  抱きしめてほしい。だけど縮まらない距離。  そっと手を挙げる。さよならの合図。  だけど、その手を取られる。そして次の瞬間、ふわりと温かい感覚が体全体に包まれた。 「許されるかな?」  なんて聞かれて私は小さく首を縦に振った。 「恭介くん」  そう言って恭介くんの背中に手を回そうとしたとき、恭介くんの体はふっと離れた。 「じゃあね」 「あ、うん、じゃあね」
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