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パタンとドアが閉まる音がして、部屋にはひとりきりだということがわかった。
今までの絶望や苦しみとは全然違う虚無感が体にまとわりついた。からっぽなのに温かい、そんな両極端な気持ちになる。
そして何事もなく日々は過ぎていく。侑哉は当たり前に仕事に行き、当たり前にSNSで悪さをして当たり前に浮気をした。
そしてついに探偵事務所からの調査報告が届いた。
結果は黒、真っ黒、探偵事務所の人は「誠に残念ですが」と沈痛な面持ちで撮った写真などの資料を見せてきた。その顔はいつもの仕事上の演技なのかもしれないけど私は吹き出しそうになった。
真っ黒なのは知っているし、真っ黒でなければ困るから。そろそろ株が暴落する頃だ。急がなければならない、私はこの証拠を持って弁護士事務所に向かった。
物事は順調に進んでいった。
だけど恭介くんに会えない日々が続いていた。恭介くんの連絡先は当然この世界の恭介くんが持っているわけで、私が会いたい恭介くんへは繋がらない。
そんな思いを募らせながらも「別れてほしいの」ついにその言葉を言うときがきた。
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