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「家族と言えど自分とは別の生き物だ、いくら血が繋がっていてもお互いにお互いになれるわけではない。自分ではない別の人間の事を深くまで理解する事は容易な事ではないと言う事だ」
「…あぁ」
「だが どうしようもなくなって死と言う選択をしても、だ。残されていった人々の心の中に亡くなってしまった相手との 一瞬でも“楽しかった”・“幸せだった”と言う感情や記憶が鮮明に刻まれてしまっていたら どうしても勝手に亡くなってしまった相手に対して置いていかないでくれと思ってしまうよ」
「思い出だけ残して消えてかれんのは勘弁してほしいよな…。お前はやめてくれよ?」
「それはこちらからの頼みでもあるよ、禄助?勝手に死んだら俺が君を殺してあげよう。覚悟していたまえ」
「おぉ、怖……」禄助は身震いした。
「しかし俺達は案外酷い人間かもしれんな」
「なっにを今更…」
足を組み直した李兎を横目に禄助は はっ と笑った。それから う〜ん と背伸びした。「ずっと正座してたからあちこち身体痛てぇわ」
「足だけじゃなくて?」
「朝起きた時から何か首から肩甲骨から痛いんだよ」
「ならばそれは正座が原因ではなく寝相の問題だな」
くすくすっ と李兎は上品に口を手で隠して笑った。
「加奈子さんと一回も話しした事ないけどさ気になって仕方ない事あんだよね…」
禄助は頭の後ろで腕を組むと空を見上げた。
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