足音

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「娘さんの事について聞きたくて」 将吾はスクリーンを観ながら話す禄助の方を見た。 「あんたの娘さんって“かなこ”さんって言うんだろ?あんたと誰の娘さんなの?隣のお姉さんとの子?」 「キミには関係ないだろ」 「私の子じゃないわ」凛花はにっこり答えた。 「そういや あんたが足怪我して入院した時に あんたの担当についた看護師さんが一人居たよな。名前は確か……谷口ゆう子さん」 将吾の瞳孔がグッと開いた。 「知り合いの病院関係の人に頼んでその病院で谷口さんと同僚だった看護師さん達に聞いてもらったらね、随分仲が良かったみたいだって皆口を揃えて言ってたそうだよ。まるで“恋人みたいだった”ってね」 凛花は黙って目を瞑った。将吾は平静を装って「気のせいだ」と言ったが額からは汗がだらだら流れ落ちていた。 「“かなこ”さんって、谷口加奈子さんの事だよね。将吾さんとゆう子さんの娘」 「違う…」 「もう亡くなってしまった大切な宝物」 「やめてくれっ!!」将吾はつい叫んで立ち上がってしまった。他の客達が 何だ何だ? と ざわつき始めたのでようやく我に返って将吾はまた椅子に座り直した。
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